第3547回
日本の「食」より「個店」が輸出産業に
日本でチェーン店を展開して
株を上場まで持って行ったレストラン業者は
昨今の不景気で頭を抱えています。
どうせやるなら台湾はどうだろう、
香港やシンガポールはどうだろう、
いやいや、いっそ人口の多い中国大陸で勝負したらどうだろうと
海外進出に乗り出しています。
チェーン店は店の数で勝負しますので、
普通の人にできないと思うかも知れませんが、
レストランは1軒つくってお客を集めることができたら、
それを複数にしてドンドンふやせばいいのですから
そんなに難しいことではありません。
一番難しいのは最初の1軒で
お客をひきつけることができるかどうかですから、
飲食店の海外進出は「個店」で勝負することになります。
これが意外に難しいのです。
海外へ行って料理屋をひらく日本人は
ほとんどが現地にいる日本人を対象にします。
すし屋や天ぷら屋からはじまって、ソバ屋や一杯飲屋まであります。
ここで成功したら1店が多店になるのですが、
多店化に成功した店を見ていると、
日本人が相手でなくて、
現地人をお客にすることに成功した人たちです。
従って現地の人が何を好んで食べるのか、
どんなお金の払い方をするのか、
とりわけ日本人の神経の行き届いたサービスが
どこまで受け入れられるかが勝負の分かれ目ということになります。
そう言った眼で見ると、
世界で通用するのは日本人のサービス精神であって、
日本料理ではありません。
一世を風靡したベニハナだって日本料理ではなくて、
日本風のアメリカ料理だから広く受け入れられたのです。
恐らくこれから中国で受け入れられる日本料理だって
トロや焼肉からはじまって
ラーメンやギョウザにまで及ぶでしょう。
マグロという言葉は知らなくとも
トロなら知っている中国人がふえているし、
日本の霜降り肉の方がアメリカやオーストラリアの牛肉より
ずっとおいしいことを知っている人は
年と共にふえる方向にあります。
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