中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3533回
いよいよ大きな変化の時代に

30年前に、私がこれから日本で起ることについてあげた
第2の社会現象は成長経済が終って
「成熟化社会」となるということでした。
戦争に夢中になっていた時代が終って、
敗戦後の沈滞から高度成長がはじまっても、
日本でそのことに気づかない人が大半でしたが、
台湾から香港を経て、小説家になるべく東京へ戻ってきた私は
すぐにそのことに気づきました。
ですから文藝春秋に「日本天国論」を書き、
続いて中央公論で「金銭読本」からはじまって
数々の経済や株や利殖の本を出版し、
朝日新聞社からさえ、「投資家読本」を出して
ベストセラーズになったことがあります。

しかし、その私が50代になると、
日本の高度成長も一段落して
成熟化社会に移ることを予感するようになりました。
成熟化するということは日本の経済が一応、オトナの骨格になって
これからは悩みの多い社会になるぞということです。
実はその9年も前から私は1ドルが100円になることを予言して
プロの人たちから嗤われたことがありますが、
1987年になっていよいよそれが現実となったのです。

成熟化社会になると、
社会で起ることが高度成長時代と違いますから、
同じ考え方で対処すると、ひどい目にあわされます。
ドルを稼ぎすぎてバブルははじけるし、
土地だって株だって大下がりに下がるし、
倒産する人も企業も珍しくなくなってしまいます。
ですから商売のやり方も人としての生き方も
変えなければならなくなりますし、
そうしないとお金を借りてうまく億万長者にのしあがった人だって
一歩間違ったら奈落の底まで落ち込んでしまいます。
ちょうど同じ時期に「国際化」がすすみ、
日本は輸出によってドルを大量に稼ぐようになったので、
どちらかというと鎖国と排他的な気風で外国と接して来た日本が
世界市場で活躍する時代になりました。
「老齢化」と「成熟化」と「国際化」が
日本を大きく成長させたばかりでなく、
日本人の生き方を大きく違えることにもなったのです。
今や成長の時代がいよいよ大きな変化の時代に変わるところに
さしかかっているのです。


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2009年11月11日(水)

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