中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3528回
年金を貰えなくなる時が必らず来ます

寒い風の吹くウィーン旅行の1日目に
私が街や公園を歩いていて出会った人はほとんどが老人でした。
どうして老人ばかりで、
若い人はいないんだろうと私は首をかしげました。
ヨーロッパが日本より一足先に老齢化社会に踏み込んでいることを
私はきちんと理解していなかったのです。

翌日、セーターを買うために
デパートやファッションの店を覗きに行きました。
繁華街の入口に近づくと、
10人ほどの若者が歓声をあげながら出てきました。
見るとボールを投げ合いながら走っているのです。
それがウィーンではじめて見た若者たちの光景でしたが、
新宿や渋谷を歩く若者たちとあまりにも違いすぎて
淋しい気持になりました。

私たちはデパートに入って
セーターか、オーバーでもと思ったのですが、
当時の私たちはパリが世界のファッションの中心地と
堅く信じて疑わなかったので、
どうせならパリに着いてからにしようとガマンして
何も買いませんでした。
おかげで風邪をひいて
パリに着いてからもゴホンゴホンがとまらなかったことを
いまも覚えています。

もちろん、日本もやがて老齢化社会になることは、
私も先を読むことには関心を持っていますから、
その何年も前から、新聞の連載の中でも言及しています。
高度成長の日本では日立や東芝や新日鉄のような会社は毎年、
1000人にものぼる新社員を採用しています。
日本には年功序列給があるばかりでなく、年々昇給がありますから、
仮りに定年が来て1人に3千万円払うとしても、
毎年3百億円の退職金を用意しなければならなくなります。

そのくらいのお金にも困らないと思うかも知れませんが、
産業界は景気不景気の影響を受けるし、
競争に敗けて倒産に追いこまれることもあります。
従って退職金もあまり当てになりませんが、
老齢化がすすめば一番当てにできないのは
退職金よりも年金ではないでしょうかと警告したことがあります。
どう考えても年金を払う人よりも貰う人がふえれば、
貰い分がなくなるからです。


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2009年11月6日(金)

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