第3512回
役人を目の敵にしても役に立たない
政権が変わって新しい内閣が誕生し、
それぞれの部署から大臣たちの新しい政策が打ち出されていますが、
きいていて「何も知っちゃいないんだなあ」と
こちらがびっくりするような発言が次々ととび出してきています。
なかでも私が一番びっくりしているのは、
役人が言うことをきかないからとっちめてやれ、
先ずその退路をふさぐために
役人の天下りを禁じてしまえといった意見です。
「日本の国は政治が弱体で、行政は意外にきちんとしている国だ」
ということは広く世界に知られています。
その証拠に
不当な政治資金を受け取って失脚する政治家は多いけれども、
役人がワイロをとって地位を奪われるケースは稀にしかありません。
役人は政治家たちが議会で決めた法律を施行する係りで、
地位的には重役会で決めたルールに従って動きまわる
社員みたいなものです。
社員がなかなか言うことをきかないから役人の口を塞いでやれ、
定年後に逃げ込む先も
通れないように道をふさいでしまえという姿勢で、
会社の社長や重役たちが
社員をうまく使いこなすことができるものでしょうか。
まして社長になった方が世間知らずの2代目で、
しかもいつ首がとぶかわからない
不安定なポジションにおかれているのに、
社員の首の根っこをおさえることが
はたしてできるのでしょうか。
お役人たちが予算を決めるデーターを
提供する立場におかれていることを奇貨として、
次から次へと公団公社をつくって自己救済の道をひらくだろうことは
昭和33年から34年にかけて「オール読物」に連載した
「キチガイ日本」の中で私が予言しております。
政治家だって自己救済に熱心なのですから、
高級役人が自己救済に頭を使うことを防ぐことはできないでしょう。
それを塞ごうとすれば、
公団公社の数を減らすことと役人の数を減すように
予算を組めばいいのであって、
役人の手足を縛っても効果がないことは目に見えています。
どうして子供みたいなことを考えるのでしょうね。
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