中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3510回
消費をふやすために住宅スペース倍増運動を

景気が悪くなって行くさなかで国内消費をふやすのは
容易なことではありません。
どこのデパートに行ってもお客の数は売り子の数より少いし、
スーパーで人だかりのしているのは食べ物の安売りコーナーだけで、
衣料品売場に至っては半額セールのコーナーだって
お客の方が素通りしてしまいます。

イトーヨーカ堂では
赤字になっている支店を30軒閉めると発表していますが、
赤字になっている原因は衣料品売場に人が寄りつかず、
値の張る商品がさっぱり売れなくなっているからです。
スーパーの衣料品売場のお客が
ユニクロにとられていることもありますが、
同じことがデパートの衣料品売場にも起っています。
どうしてかというと、どこの家の洋服ダンスの中も
ふだんあまり着ない洋服がぎっしり詰っていて、
新しい洋服を買って来ても置き場がないし、
こんな不景気な時に新しい服など買わなくとも
不自由を感ずる家庭はないからです。
もうどの家庭も要らないもので家の中が一杯なのです。

ですから多少でも余裕のある家庭にお金を使わせようと思えば、
要らない物とゴミの置き場をふやさせるよりほかありません。
そのためには家の居住スペースを拡げる政策を
国が先頭に立って打ち出す以外に妙案がありません。
50年ほど前は「所得倍増論」が
収入の少い人たちの心をとらえましたが、
ゴミの置き場に不自由する今日では
「住宅スペース倍増運動」でもやらなければ、
デパートやスーパーで買物をしてくれる人は
いないのではないでしょうか。

バブルのはじけたあとの不景気で
産業界が頭を抱えていた十何年前に、
私は「住宅スペース倍増運動」を提唱したことがありました。
でも政治家の人もお役人さんも誰一人、
耳を傾けてくれる人はおりませんでした。
おかげで不況から立ち上がるのに16年もかかってしまいましたが、
もう一回、同じ目にあわされる時が来たのではないでしょうか。


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2009年10月19日(月)

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