第3508回
本当に円高を心配しなくともいいのか
新しく任命された藤井財務大臣が
アメリカのガイトナー財務長官と対談した折りに、
相手に調子を合わせて、
「為替レートは自然に任せるべきで、
政府が円安に誘導する気はない」と
余計な口を滑らせた途端に、円が90円を割って
産業界から一せいに非難の声があがったのは
ついこの間のことです。
私は口を滑らせただけのことだとは言え、
重要なポストにある人が
産業界で今、何が起っているかについて
あまりに無知なことに先ず驚き、
政治家の中でも最もエキスパートにあるべき人でさえ
この程度の認識しかないことに
日本の先行きについて不安を感じないではおられませんでした。
円が忽ち90円を割ったのに驚いて、
藤井さんは前言を取り消した様子でしたが、
この調子では円は75円になってしまうぞという予想まで
とび出してきています。
石油が150ドルまではねあがった途端に
250ドル説を唱える人さえ現れましたが、
将来そうならないとまでは保証できませんが、
実際には一挙にそんな過激なことにはならないですんでいます。
それと同じように円高も当面、
そんなに過激なことにはならないでしょうが、
100円が90円になっただけで産業界は既に
大へんな損害を蒙っています。
1円でも円安に動かすのが財務大臣の仕事であって、
そうした認識が全くないことに私は不安を禁じ得ませんでした。
日本には円高容認の評論家が結構たくさんいるようですが、
いずれも実業にタッチしたことのない人たちで、
自分がそのとばっちりを直接受けない立場にいます。
中国の政府にはそういう主張をする人は先ず1人もいません。
輸出黒字が続けば結果として人民元高になるという
危機感はありますが、
それでは中国が対外貿易で稼げなくなりますから
国をあげて元高に抵抗しているのです。
もちろん、世界的な金融不安によって元高への圧力が減れば、
もっと大きな心配が襲いかかってきます。
抵抗感も緊張感もない日本と
はたしてどちらの国民のためになるのでしょうか。
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