第3462回
年功序列給では競争社会を生き残れない
敗戦から立ち直って、日本経済の成長が軌道に乗りはじめると、
世界中が日本式経営に注目するようになり、
「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン」みたいな本も
次々と書かれるようになりました。
日本的経営を代表する雇用システムは何と言っても、
年功序列給と終身雇用制です。
年功序列給とは毎年のように定期昇給があって、
功績のあるなしに拘らず、
長く勤めていると給料がしぜんに高くなるシステムです。
課長とか部長とか、あるいは取締役、
社長と言った役職による職務給とか、
業績による歩合給はどこの国にもありますが、
有能無能に拘らず、長く勤めておればしぜんに給料があがる制度は
日本にしかありません。
恐らくほかにあまり就職のチャンスがなく、
一つ所に勤めるのが当り前だった時代に
お恵みみたいに給料をあげてもらった名残りだと思いますが、
それがそのまま会社に定着すると、会社を辞める人が少くなります。
それが日本人の会社に対する忠誠心とかかわりがあると考えられ、
他の資本主義の国々の流動比率が高いのと比較されるようになると
企業の技術温存に役立つ
日本的経営の長所の一つに数えられるようになりました。
それが定年になるまで免職されずに続くとなると、
人材不足が続く間は、年功序列給も終身雇用制も
日本的経営の長所として、
主として日本びいきの外国人経営学者たちから支持されてきました。
しかし、私は比較的早くから、こうした制度に異議を唱えました。
会社に対する忠誠心を温存できるとしても、
それは企業にそれだけの余裕があっての話で、
余裕がなくなった途端に崩壊してしまうと考えたからです。
忠誠心を支えると言っても、
会社にとって最も役に立つ人の忠誠心ではなくて、
その他大ぜいのどうでもよい人たちの忠誠心です。
はたしてバブルがはじけて会社が存亡の瀬戸際に立たされると、
会社が先頭に立って
年功序列給のタガをはずしにかかったのを見ても、
その脆さがわかります。
日本の多くの会社が本社員の採用を減らして、
アルバイトと派遣社員で
間に合わせるようになったのを見てもわかります。
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