中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3431回
M&Aというときこえはいいが

お金でお金が儲かるようになると、
人はつい原理原則を疎かにするようになります。
お金を貸した相手がお金を儲けてくれなければ
お金を貸した人にも分け前は廻ってこないのです。
ところが、M&Aで狙った対象が値上がりしたり、
株価があがったりしたりすると、
投資の目的をはたしたことになりますから、
値上がりするかどうかが投資の狙い目になり、
それが持続性のあるものかどうかは
あまり問題にならなくなってしまいました。

たとえば、バブル崩壊のあと、
日本の上場企業はアメリカの禿げ鷹連中の
乗っ取りの対象になってきました。
狙いはその企業に莫大な資産があるかどうか。
その資産に比べて株価が不当に安価に放置されているかどうか。
何しろ日本の株主たちは寛大というか、無知というか、
経営者の利益の処分に
異議を申し立てることは滅多にないので、
多くの会社が積立金や留保金を莫大に積みあげています。

そういう会社に狙いを定めて大株主になれば、
経営に口出しすることもできるようになるし、
場合によっては配当をふやすように要求することもできます。
もちろん、抵抗も多いのですが、
うまく行けば、株価を倍にも3倍にも押し上げることができます。
気がついたら、日本の株式市場はアメリカをはじめとした
そうした買い占め屋が主導するようになり、
海外資本による買い占めを未然に防ぐために、
上場を廃止する企業もふえたし、
上場会社の再編成がすすんで、
ホールデイング・カンパニーという
持ち株会社に一変してしまいました。
それでも日本の一流会社の大株主を外国資本が占めるようになり、
トップの座を外人に引き渡す会社さえ出てきました。

それはそれでかまわないとして、
経営が目的でなく、値上がり益が目的の買占めは
目的を果たしたら売り逃げをやります。
もちろん、値上げに失敗しても同じことをやります。
そういうやり方がほぼ限界に達したところで
アメリカの金融不安が一挙に勃発したと
見ていいのではないでしょうか。


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2009年8月1日(土)

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