中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3430回
付加価値の分け前が銀行の取り分なのに

銀行がお金を貸して金利を稼ぐことができるのは、
お金を借りた企業がそのお金を運用して
お金を儲けることができるからです。
お金がお金を生んでいるわけではありません。
ところが、お金を出せば欲しい物は何でも手に入るので、
ついお金は万能なのだと錯覚してしまいます。

昔は黄金が通貨の役割をはたしました。
ですからどこの国の王様も黄金を富と考え、
それが少しでも外国に流れるのを禁じました。
いまでもインフレになったり、金融不安が起ると、
紙幣なんかあてにならない、
黄金が値上がりするから黄金を買うか、
金山の株を買いなさいとすすめる声をききます。
黄金は通貨としての役割を長く果してきましたので、
その名残りがいまも残っていますが、
本当は入歯か、腕輪になるくらいで大して役に立たないものです。
それでも貴金属扱いをされるのは、
黄金こそ本物の通貨であり、
紙幣はその代役をはたしてきたことを
誰でも知っているからです。

ところが、お金があれば何でも買えますから、
人間はついお金を万能と考えがちです。
お金で土地や骨董品を買ってそれが値上がりすれば
同じようにお金が儲かりますから、
土地も骨董品も投資の対象になります。
でも土地や骨董品は付加価値を生むものではありません。
自動車をつくったり食糧品をつくったりすれば、
原価と売価の間に差額が生じます。
その差額が付加価値であり、
付加価値の生産にお金を投じるのでなければ、
お金の分け前をもらうことができないのです。

一般に工業製品の付加価値は農産物の付加価値より大きいので、
工業が発達するとその社会は
付加価値がふえた分だけ金持ちになります。
そういう社会ではお金の活躍するチャンスがふえるので
銀行のはたす役割や投資会社の儲けるチャンスがふえるのです。
そこで銀行や投資会社で働く人たちが錯覚を起してしまうのです。
儲かる仕事なら何でも投資の対象になると。
アメリカがやってきたことは
将にそういうことではないでしょうか。


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2009年7月31日(金)

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