第3367回
中国の国内消費をバカにしてはいけません
欧米や日本の工業先進国に比べれば、
中国はまだ工業生産の歴史は浅いし、
自国内の潜在需要もかなり残っているので、
産業界の受ける痛手は
先進国ほど大きくはないだろうという見方があります。
事実、その通りだと私も見ています。
しかし、工業先進国の豊作貧乏が長く続けば、
国内需要はともかくとして、
アメリカやヨーロッパや
日本への輸出が打撃を蒙ることは避けられないし、
国内の需要増がそれをカバーしてあまりあると
手放しで楽観するわけにも行きませんので、
工業の成長スピードは
かなり抑え気味になると考える必要があります。
鉄の需要がすぐ元へ戻るだろうとか、
石炭やセメントの市場がすぐにも回復するだろうとか、
いままでと同じスピードで産業界に期待しようとすると
期待はずれになるおそれがあります。
もちろん、
今後もコスト・ダウンは工業製品の最大課題ですから、
「バイ・アメリカン」よりは「どこに生産拠点をおくか」
が世界的メーカーの選択基準になります。
従って、中国製品が優利な立場に立つ
これまでの考え方は崩れないでしょう。
従って建設機械の増産体制はアメリカや日本の本社から
中国の生産工場に移ることに変わりはないでしょうが、
同じように中国を本拠にしてきた繊維製品の縫製加工場が
中国からベトナムとかカンボジアとか、
さてはミャンマーやパキスタンにまで
大移動することも考えられます。
そういう動きを見ていると、
中国のこの次の安全で確実な成長産業は、
景気が回復して国民所得が向上する中でふえ続ける
国内消費ということになります。
日本の高度成長時代も、
輸出の増大でかなりの外貨を稼ぎましたが、
国内産業の成長に1番貢献したのは、
年々ふえ続けた国内消費でした。
それと同じことがいま中国で起ろうとしています。
中国の場合は輸出の多かった分だけ
国内消費がそれにとってかわりますが、
人口の多いところですから、
ふりかわる分も莫大だということです。
中国の場合はやっとこれから
人の住むスペースを拡げるところですから。
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