中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3285回
いよいよ日本企業も海外大移転の時代に

日本人にはまだ頼れそうな政府が残っています。
実際には自分で稼ぐこともできない
殿様の二代目、三代目が
家禄の食い潰しをやっているだけですが、
工業化に成功して一世を風靡した余禄で
何とか食いつないで来たので、
さほどの危機感を持っていない人が大半です。
当然のことながら、
親方日の丸の気風は今後もまだまだ続きます。

それに比べると、いま世界的スケールで
一番活躍しているのはユダヤ人と華僑です。
早くに国を失ったユダヤ人は他所の国に行って
生活の基盤をつくるよりほかありませんでした。
行った先々で迫害を受けたり、差別待遇をされたので、
その分だけ努力を重ねて、
学問的にも、金銭的にも
すぐれた実績を築き上げることができたのは
皆さん、ご承知の通りです。

また清朝が終って
世界中の帝国主義国家の食い物にされた中国で
食うために海外に出稼ぎに行った何千万人という華僑が
それぞれその移住先で経済的な地盤を築き、財をなし、
ユダヤ人もたじたじの実績をおさめています。
いずれも国を頼りにすることができなかったせいで、
早くから国境を越えた活躍をするめぐりあわせになったのです。

それに比べると、頼るべき国を持ったばかりに、
日本人は国家という傘の下で居心地のいい生活を続け、
その分だけ国境を越えたビジネスで遅れをとりました。
戦後、工業化に成功して
メイド・イン・ジャパンの売り込みをする必要に迫られてから、
やっと外国に進出するようになりましたが、
それは「富山の薬売り」の延長線上にある
セールス活動にすぎず、
本拠地はあくまでも自分たちの国でしかありませんでした。
それが自国内のコスト高のために
生産基地を外国に移すようになってから
まだそんなに長い時間はたっていません。
それがここへ来て
自国内で工業生産もやって行けない環境まで
追い込まれてしまったのです。
いよいよ日本企業の海外大移動がはじまろうとしているのです。
あなたが企業の経営者ならどうしますか。


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2009年3月8日(日)

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