中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3226回
中国に日本の流通業が割り込める隙間が

私はかなり前に「中国人と日本人」という本を書いて
ロング・セラーズを続けたことがありますが、
単行本にサインを頼まれるとよく
「日本人は職人、中国人は商人」と書きました。
江戸時代から続いてきた職人気質が
日本の工業化の推進力になったのに対して
中国人は売りと買いの差益を稼ぐことにはたけているけれども、
利益をあげることしか眼中にないために、
工業生産の分野で遅れをとったという意味合いもあってのことです。

しかし、この20年間に中国で起った経済発展は
こうした中国人に対する既存概念を完全に打ち破った
といっても決して言いすぎではありません。
有無相通ずることによってその差益を稼ぐ商人から、
物づくりに励んで「世界の工場」と呼ばれるほどの
工業国に急成長したばかりでなく、
ドルを1兆9千億も持つ世界一のドル保有国になったのですから、
中国人を見る世界中の眼を一変させてしまいました。

と同時に世界一商売上手で、
抜け目のないことでユダヤの商人をもしのぐ中国人が
必らずしも世間が考えるような商売上手ではなくて、
「安売り」にかけては
トップの座から引きずりおろされないとしても、
「サービス」と「品質」でお客を満足させる商売上手でないことを
認めざるを得ないレベルまでのしあがりました。
いま上海はもとよりのこと、
北京、天津、成都、更には広州、深圳、珠海のような外資が進出して
近代化のすすんだ大都市に行くと、
流通の最先端を走る百貨店やスーパーやコンビニは
いずれも中国本土の人たちの経営ではありません。
中国人が経営している場合でも昔風の商人ではなくて、
香港、台湾もしくは華僑資本によって運営されており、
日本から進出した流通業者もウォルマートやカルフールと肩を並べて
客集めにしのぎを削っています。
どうしてかというと、
豊かになった中国人は安さに敏感なことに変わりはありませんが、
もっと品質のよいものを
サービスの良い店で買うことに味を占めるようになったからです。


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2009年1月8日(木)

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