中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3175回
どうして円高になったのかわかりますか

私たちがさっぱり理解できないことが次から次へと起っています。
たとえばアメリカ発金融不安で、
ヨーロッパもそれなりの被害を受けているので、
ユーロが値下がりしています。
それなら日本の金融機関もそれなりの被害を受けているのですから、
日本円も値下がりしそうなものです。
それなのにどうして日本円だけが
猛烈な勢いで値上がりしているのでしょうか。

それなら人民元も値上がりしそうなものですが、
人民元はやや弱含みです。
また韓国ウォンも台湾元もアメリカの禿鷹たちが
株や不動産を売ってドルに兌換してアメリカに引き揚げているので
かなり値下がりしています。
ひとり円だけが大勢に逆らって高くなっているのは
どうしてでしょうか。

1ドルにつき1円、円高になったら、
トヨタやホンダなどの自動車メーカーはもとよりのこと、
ソニーやパナソニックやキャノンのような輸出の多い大企業は
何十億円もの減収になります。
そうなったら、日本国中の輸出産業の中で
赤字に転落する企業は珍しくありませんから、
不況は一段と深刻になるし、税収の赤字も更に増大します。
日本経済が優勢になる可能性なんか全くないのに、
一体全体どうして円高になるのでしょうか。

先日も台北でいま台湾の経済政策を決定する位置にある
蕭万長副総統とおしゃべりをしていて
「どうして日本円だけ値上がりするのかわかりますか?」
ときいたら
「いや、さっぱりわかりません」と首を横にふっていました。
日本の新聞では
日本の海外投資の資金が引き揚げてきているからだと
説明していますが、
いつ日本人がそんなにたくさんの海外投資をしたのでしょうか。
そして私は説明をしてさしあげました。
日本人が海外投資をした資金ではなくて
アメリカの禿鷹たちが日本の銀行から円で借りていた借金に
返済の期限が来たからですよ、と。
長期にわたった日本の低金利政策が
日本に難題をもたらしているのです。


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2008年11月18日(火)

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