中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3057回
絶対に駄目と言っているわけではありません

日本料理はいまや世界中から認知されるようになりました。
世界中どこの大都会に行っても、
日本料理屋の一軒や二軒はあります。
もちろん、ほとんどが日本人が現地に行ってひらいたものです。

なかには日本国内でもはずかしくないような
本格的な料理を出す立派な店もありますが、
大抵は店のつくりは立派でも
こちらが赤面するような
怪しげな天ぷらやお刺身を平気で出す店です。
日本より所得水準の低い国で、
日本料理の素材を揃えるのは
もともと無理なことですから、
別に不思議でも何でもないことですが、
こういうことをやっても決して成功しないことは
恐らく店の経営をひき受けた人にもわかっている筈なのに、
それをやめない人がたくさんいるのです。

どうしてかというと、
外国に出かけて行って生計を立てたいと意図する日本人が
眞先に考えることが食べ物屋だからです。
その場合、
日本人がやることですから、
先ず頭に浮ぶのは日本料理屋です。
自分が日本料理の職人出身ならそれが当り前でしょうが、
そうでない人でも同じことを考えますから、
先ず仕事があってそれから職人を探してくることになります。
シロウトの人が考えて、
シロウトに毛の生えたような職人を探してきますから、
あやしげな日本料理店がはじまることは
はじめる前からわかっています。

ですから私の近著「非居住者のすすめ」の中で、
外国で生計を立てるなら
「レストランをひらくのはおやめ」
と先ずピシャリとやっています。
どうしてかというと、
外国に行って誰でも眞っ先に考えることは日本料理屋か、
スシ屋か、鉄板焼屋の類にきまっているからです。
「それは駄目ですよ」と言われたら、
途端にどうしていいかわからなくなってしまいます。
実はそこから出発して新しい道をひらくのが
海外生活の第一歩だと私は考えているのです。
海外で日本料理屋やスシ屋をひらくのは
絶対に駄目だと言っているわけではありません。


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2008年7月23日(水)

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