第3037回
「口奢りて久し」の文庫本できてきました
私は文章書きとしてだけでなく、
自分の人生もまだ完全に呆けてしまわないうちに
おしまいにした方がいいと考えて
「私は77才で死にたい」という本も書き、
雑誌や新聞の連載も77才で終わるようにプランをたてました。
ところが、ごらんのようにいまなお生き恥をさらしていますし、
連載物も77才で終わらずに80才になったところで、
自分の方から潔く打ち止めにしました。
その1番ラストを受け持ったのが
中央公論誌に細々と息をつないで書いた「口奢りて久し」です。
この本は私が「食は広州に在り」「象牙の箸」
「食前食後・漢方の話」にはじまって、
美食家として広く知られるようになった食べ物随筆のいわば
締めくくりとして平成16年に単行本として
中央公論新社から出版されましたが、
つい最近、中公文庫の一冊として再び世にでました。
もう既に書店に並んでいますので、
本好きの皆さんの目にはふれているかと思います。
単行本になった時も、
かって私の「食は広州に在り」を食に関する
戦後三大名著の一冊として推賞して下さった丸谷才一さんが
新聞に身にあまる書評をして下さいましたが、
今回は、更にそれに加筆して、
この本を読むと、
「何となく気宇壮大になって、コセコセした気分が失せる。
世俗の苦労を忘れ、視野が広くなり、
気性がゆったりしてくる。
それが『口奢りて久し』の最大の特色であります。
邱永漢は金銭的現実を決して忘れないエピキュリアンという、
いわば模範的な人生の教師だ」
と持ちあげてくれています。
恒例により抽選で読者の皆さんに著者のサイン入りの本を
10冊進呈いたしますので、
興味をお持ちの方はすすんでご応募下さい。
なお籤にはずれた方で、
食べることに熱の入った人は書店に一走りして下さい。
税別629円ですから、
ざるそば一枚にも及ばないお金で
20枚分食べる時間をオーバーして
楽しんでいただけるのではないでしょうか。
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