第3035回
労働力不足、「この道はいつか来た道」
中国でも、かつての日本がそうであったように、
労働力の安いことを売り物にした経済構造に異変が起っています。
安い労働力を全国から集めてスタートした
広東省の深圳や東筦の生産工場では
2、3年前から賃上げをしないと人が集まらなくなりましたが、
最近は賃上げをしても人が集まらなくなっています。
賃上げをしても採算に乗る付加価値のある業種なら
賃上げと合理化を同時に進めればなんとかやりくりができますが、
繊維とか、衣料品の加工とか、労働集約的な分野では
コスト高に見舞われた上に、ドル建ての商売をやったのでは
人民元の切り上げでいよいよ採算がとれなくなっています。
最近では金ぐりのできなくなった工場で、
経営者が従業員をおいたまま夜逃げをするケースも
珍しくなくなりました。
そこで工場の大移動がはじまり、
ちゃんとした経営をしている企業でも、
広東省にはおられなくなって、
四川省とか湖南省に工場ごと移動したり、
いっそのこと思い切って、
国境をこえたベトナムやラオスに移転する動きも
見られるようになりました。
しかし、こうした変化は
労働集約的な業種にだけ起っていることではありません。
中国のすべての企業で、
生き残りをはかるための生産の合理化と
コストダウンが要求されるようになったのです。
町のレストランだって
お互いに人材の引っこ抜き合戦がはじまっているし、
10人かかったところを
機械化によって2人か3人ですむようになれば、
パン屋やケーキ屋だって
省力をやる必要に迫られるようになったのです。
こうした対応は日本人の方が先輩ですから対応は素早いし、
新しい需要が発生すれば新しい分野の仕事もふえます。
中国でもそうした変化に対応ができる企業だけが
生き残る時代に突入したので、
日本人にとって新しく活躍のできるチャンスがふえた
と言ってよいのではないでしょうか。
日本人にとっては「この道はいつか来た道」ですから。
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