中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2916回
見城徹「編集者という病い」にお見舞いを

最近の出版業界の衰退ぶりには目を覆わせるものがあります。
半世紀にわたってこの世界を生きてきた私としては
自分らの時代の終わりを痛感させられる半面、
その流れにさからって万丈の気を吐いてくれる者はいないものかと
目を光らせています。
一番目につくのは何と言っても幻冬社の見城徹さんです。
かつて郷ひろみの本とか、最近で言えば、田中森一の「反転」とか
話題に事欠かない数々の出版物を手がけていますが、
一番面白いのは太田出版から出された
「編集者という病い」(定価1600円+税)という
ご自身の頭の中を
赤裸々にレントゲンで映し出して見せた本ではないでしょうか。
「ひんしゅくは金を出してでも買え」
と帯にデカデカと印刷されているように、
ご本人の性格がそのまま次々と出版される本に
そのまま現われています。
もうどの出版社も
過去の栄光の中で辛うじて生命を長らえているだけですが、
その中で夕焼小焼を感じさせる残照に輝いているのが
そのままこちらにも伝わってきます。

話題が多いということは
まだ燃えつきていないということですが、
文芸春秋の池島信平さんや中央公論の嶋中鵬二さんと言った
一世を風靡した名編集者と親しくつきあってきた私から見ても、
まだまだ活躍してもらう必要のある人です。
たとえば、最近、次々と創刊されている
「おじんのおしゃれの雑誌」ですが、
私は明日の朝着る服を夜眠る前にきめておく人ですから、
ゲイナーやメンズ・ノンノからはじまって
10冊くらいは毎月めくってみます。
そうした中で一番頭を使わないで編集しているのが
どこの頁にもSEXYと印刷しておけば
人が見てくれると錯覚しているLEONですが、
もう定年を迎えた団塊の世代に本気になって読んでもらおうと
ない知恵を搾っているのが幻冬社のGOETHEです。
これから年をとることに一番迷いの多い世代にふさわしい雑誌は
月刊総合雑誌ではありません。
オジンたちが最近になって
やっと手にとるようになったおしゃれの雑誌です。
中でもゲーテが意外に出色なのは
ちゃんとひんしゅくを買うほどの努力をしている証拠です。
ついでに申せば、自分の本を自分の出版社で出す社長がいる中で、
見城さんは池島信平さんと同じように
自社で出さないというルールはきちんと守っておられます。
活字に愛着のある方は
どうぞ見城さんの「病い」の見舞いに行ってあげて下さい。


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2008年3月4日(火)

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