第2848回
「日本は没落する」をご一読下さい
最近、私が読んだ本の中で、なかなか読みごたえのあったのは、
榊原英資さんの
「日本は没落する」(朝日新聞社刊・定価1300円)です。
榊原さんは
大蔵省の国際金融局長を務めたことのある為替のプロで、
「ミスター円」という異名で
その筋の人たちによく知られています。
雑誌社に頼まれて対談をしたことのある仲なので、
お役人をやめて慶応大学教授になってからあとも、
その活躍ぶりにはずっと注目していました。
その榊原さんの近著に
かなり刺戟的なタイトルがついていた広告を北京で見たので、
東京に戻ってからすぐ八重洲ブックセンターでもとめて、
夜を徹して通読しました。
サブプライム・ショックから説きおこして、
いまの世界を駈けめぐるドルの実態をとらえながら、
日本のおかれている危機にふれているので、
脅かしで読者を魅きつけようとするアジテーターとは全く違って、
とてもわかりやすくて、説得力があります。
世界の経済の流れから見ても、
いまの日本はかなり憂慮すべき位置にあります。
実は私も少し前からだんだんそういう見方に傾いているので、
それだけに読みながら何回も共感を覚えました。
「技術」と「知識」と「情報」が
国の繁栄を支えるキー・ワードなのに、
いまの日本ではそれが失われつつあることを、
すぐお隣りの韓国や中国や、
更に印度と比べて力説していますが、
日本の世界的な台頭を半世紀前に予言した私としても
できることなら賛成したくないきびしい現実です。
「アジアの時代」がもうそこまで来ているのに、
日本には「アジアの時代」に対するノウハウさえないのです。
これは以前から私が感じていることですが、
日本人の負けず嫌いばかりが表に出た感情的議論が多く、
これでどうする積りだろうかと私も頭を痛めていたところです。
アジア時代の日本を真剣に考えている人はぜひご一読下さい。
自分たちがこの次どうしたらよいか
考えるきっかけになれば幸です。
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