中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2842回
マッチ・ポンプで更に不動産の値上がり

物価が上がることには抵抗があります。
しかし、自分の持っている不動産の値上がりに対しては
誰しも内心、喜びを感じています。
とりわけ早くにローンを組んで、
自分の実力以上の不動産を手に入れた人は、
それこそ手放しで喜んでいます。

反対に不動産の値上がりに渋い顔をしているのは
家賃を払っている人たちです。
ずっと昔から只同様の家賃で政府の家に住んでいる人は
どうということはありませんが、
もうそういうボロ家に住んでいる時代ではなくなってしまいました。
新しいマンションに家賃を払って住んでいる人は
家賃の値上がりの影響をまともに受けます。
そういう人たちが
早く不動産の安いうちにマイホームが手に入るように、
安い住宅ローンを提供するのが政府のやるべきことなのに、
不動産の値上がりを食いとめるために、
中国政府は逆の政策をとっています。

また家賃の値上がりで1番頭を痛めているのは
商店街で店を借りて商売をやっている人たちです。
店を貸しているのは仮借の無い人たちですから、
この時とばかりに家賃の値上げを要求し、
それに応じなければ、
すぐにも追い立ての挙に出ます。
それがまた物価にはねかえってきますが、
そうした変化に対応できない商人は店じまいを余儀なくされます。
そういう人たちの救済も必要だと思いますが、
そのへんまでは目の届かないのは
役人たちが経済のことをよく知らないからでしょう。

そうなると、
あれこれお金を苦面してでも不動産を手に入れたい
という人がふえる一方ですから、
不動産の値段が鎮静化する傾向はどこにも見当りません。
そこへ更に貿易黒字による過剰流動性が後押しをするとなれば、
政府がいくら金融引締めをやったり、
不動産の売買益に課税するぞとおどかしても、
政府がマッチ・ポンプの役割をはたしているのですから、
効果を期待できるわけがありません。
マッチの役割をはたす貿易収支の黒字が続く限り、
中国じゅうの人たちが
不動産を買いにまわるのをやめさせる方法はないのです。
かつての日本で起ったのと同じことが
これから中国で起ろうとしているのです。


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2007年12月21日(金)

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