中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2823回
日本人にわかりにくいオイル・マネー

オイル・マネーがアメリカやヨーロッパの金融機関と
タイアップするようになったのは、
ついこの5、6年前のことですが、
石油が100ドル台をうかがう水準に達すると、
産油国の収入がかつてないほどふくらみますから、
世界のお金の色分けがかなり変わることが避けられなくなります。

日本だって、
オイル・マネーの動きに無関心ではおられなくなります。
恐らく東京証券取引所の株も狙われるでしょうし、
東京を代表する大型不動産も買収の対象になるでしょう。
それもオイル・マネーが直接狙うのではなくて
アメリカの投資会社や銀行が
先導役を買って出ることが考えられます。

いま日本でオイル・マネーにもっとも関心を持ち、
既に資本提携の関係を結んでいるのは東京海上です。
回教経済圏では保険はまだはじまったばかりで、
銀行と違ってコーランの教えに反しないばかりでなく
むしろ人助けの社会事業として受け入れられているので、
イスラム諸国のそれぞれの支配者から
目の敵にされないですんでいます。
それどころか、慈善事業的要素が強いので
オイル・マネーとしては取り組みやすい事業だし、
東京海上はもともとは火災保険の会社ですが、
いち早く、その有望性に気がついて、
マレーシアで、イスラム系銀行と、
生命保険の第一号合弁会社をつくることに成功しました。

イスラム系の企業はどこも資本主義国の企業と発想が違うので、
保険会社も保険リスクを負わない保険会社ですが、
それでも忽ち25万名の加入者が集まって
順調な上昇気運に乗っているそうです。
ではイスラム資本と日本の銀行や保険会社と
うまく馬が合うかというと、恐らくその反対でしょうから、
日本に乗り込んでくるのはイスラム金融機関でなくて、
その提携先であるシンガポールの銀行や、香港上海銀行、
そして実際活動はアメリカの投資銀行で、
オイル・マネーはその影にかくれてしまうのではないでしょうか。
日本人に親しまれているのはオイル・マネーよりも千一夜物語
というのが当分、続きそうです。


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2007年12月2日(日)

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