第2778回
帝国主義に終止符を打ったのは日本人です
モンゴルに続いてシベリアと言った
経済開発の遅れた地域に行くと、
何が日本のような天然資源に恵まれていない国を
豊かな国にしたかを教えてくれます。
それは工業が発達するかどうかです。
同じ物づくりでも、農業は収穫までのスピードが遅く、
しかも付加価値が低いので、大きな儲けにはなりません。
昔はそれ以外にこれと言った生産手段がなかったので、
農業の生産に必要な土地とその耕作に必要な農民の奪い合いが
人類の歴史でした。
18,9世紀になると、それに天然資源が加わりましたので、
強国を目指して主としてヨーロッパの国々が中心になって
植民地の奪い合いが苛烈になりました。
奇跡的に植民地化されることを免れた日本は
アジアの中で唯一の例外として
近隣を植民化する帝国主義列強の仲間に加わり、
隣国に兵を進めて大国への道を歩もうとしましたが、
作戦を間違えて元も子もなくなり、
出発点となった4つの島に閉じ込まれてしまいました。
当時の常識では4つの島で9千万人の人口を養い切れないので、
少くとも1千万人はメシが食えなくなるだろう
と考えられていました。
ですから私が作家としてスタートした50年前は
「自殺もまた忠君愛国だ」という極論さえ
ジャーナリズムで罷り通っていたのです。
そうした資源も資本もない国で、日本の工業化がはじまり、
その成功が日本を所得水準で世界で1,2を争う地位にまで
押し上げたのです。
「資源がなければ買えばよい」
「資本がなければ自分らでつくればよい」
と日本人はそれまで世界の常識になっていたことを完全に覆して
世界をアッと驚かしたのです。
豊かになると日本人の中には昔のことを忘れて
近隣諸国を侵略したことはない
と言い張る人があるようになりましたが、それは事実に反します。
侵略することに失敗した結果、
一念発起して手がけたことが
世界から帝国主義を消滅させるきっかけになったのです。
そこが日本人の素晴しいところで、
前非を認めたからと言って評価が落ちるわけではありません。
新しく出直した日本人はもっと素直に生きた方が
もっと人気が出るのではないでしょうか。
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