中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2777回
北ではなく西へ工場の大移動が

いまの中国は工場の大移動が起る時点にさしかかっています。
天津から上海、深圳、珠海まで港のあるところが先に開発され、
労働力は現地周辺だけでなく、
奥地から誘致されて出稼ぎに来た人たちで間に合わせてきました。
ところが、この1,2年で労働力が不足するようになり、
沿海地域は賃上げと退職者に悩まされるようになりました。
賃上げを消化しきれない労働集約的な産業は
安い賃金の労働者を求めて
内陸へ動くところまで追い込まれています。
私が西部開発の拠点である成都市に頼まれて、
四川省に工業団地の開発をすることを承知したのも、
こうした動きを肌で感じているからです。

東北三省ではご承知のように
工業の開発が比較的進んでいるのは港のある大連市だけです。
かつて日本人が最も多く住んでいた関係もあって、
日本の工場が最先に進出した工業都市だからです。
その大連市にも他の沿海都市と同じような
労働事情が発生しています。
しかし、沿海地域の工場群が引越先として
東北三省を選ぶかというと、残念ながらその傾向は見られません。
同じ選ぶなら、もっと暖かくて
冬でも仕事のできる地域ということになるからです。

ですから10年前に私が東北三省を訪れた時、
三省の省長さんたちに、
「農業の開発に力を入れるよりも、
北京に行って進出企業の免税減税特典を
10年以上にするよう請願したら」
と極力すすめましたが、
省長さんたちは東北は農業地帯だと
頭から決め込んでいましたから、
逆に私に
「大豆の割当額がまだいくらか残っていますが、
いかがですか」
と利権めいた話を持ちかけてくれました。
その後の旧満州の発展ぶりを見ていると、
コメの作付けが拡がったのと、
コメの質が日本米に近づいたくらいのことです。
東北三省は日本における北海道とよく似た存在で、
地元資源と農業にこだわりすぎて、
足踏みを続けているように見受けられました。
同じ投資をするなら北に向うより西に向うのが
中国の産業界の常識になりつつあります。


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2007年10月17日(水)

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