第2769回
老齢化への挑戦に私が実験台
そして、今回が3度目の実験でした。
実験台になったのは、私自身です。
王振国さんの研究目標は一つ目は癌の治療と予防でしたが、
もしあやしげな民間療治なら、
長白山脈の麓の片田舎の漢方療養所の用務員が一念発起して、
通化、珠海、上海、北京とつくる度にスケールの大きな病院を
自費で四つもつくるようなことになるわけがありません。
その王振国さんが次に考えて、
私を実験台にするだけの自信を持ったものは、
多分、「老化への挑戦」だと私も内心思っていました。
私に入院をすすめる少し前から、
王振国さんは私のところに2種類の
自分でつくった漢方の薬を届けてくれていました。
一つは骨を強くする錠剤、もう一つは免疫力を回復する液体、
でも私は1回か2回くらいは口に入れてみましたが、
あとはそのまま引出しの中にしまい込んでしまいました。
しかし、何回か私に1週間、時間をとるようにすすめてくれた
王振国さんが何を考えているか、
私には大体の見当がついていました。
血の質を改善することができれば、
心臓の働きもよくなるし、血の流れもよくなって
身体の隅々までエネルギーが活性化されて
若がえる筈だ――
それは多分、骨を活性化させることと
免疫力を強化することによって達成できる、
そう考えて研究に打ち込んだ結果
かなり自信を持ったのだと思います。
その王振国さんが私を実験台に選んだのは
的を得ていると私自身思わず苦笑してしまいました。
というのも私は自分の知らないことに常に好奇心を持っており、
目新しいものを見、新しい事をきくことに
生き甲斐を感じている人だからです。
この忙しさの中で1週間も病院にとじこめられるのは
大へんだと思う反面、
きっと新しい発見があるに違いないと興味津々でもあったからです。
仮りに私の身体に奇跡的な変化をもたらさなかったとしても、
中国の病院は改善の余地がたくさんあって、
それを具体的に知るチャンスをあたえられたと思えば
ガマンのできないことではないからです。
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