第2758回
製薬会社の創業者はセールスマン上がり
金持ちになったら生命が惜しくなるから
生命保険に加入する人がふえることに間違いありませんが、
それよりも病気になったら
病院に駆け込む人と薬を飲む人がふえます。
日本でも株式を上場した病院はありませんが、
薬屋は軒並み株価の高い銘柄が続出しました。
薬九層倍というように
薬はよく売れると高収益を約束された業種なのです。
そう思って中国の上場企業を見渡すと、
タケダとかエーザイとか言ったスケールの製薬会社は
1社もありません。
世界的な新薬もありませんが、
あってもすでに特許の切れた周知の薬を
見様見真似でつくっている会社程度のものばかりです。
それでもそうした中から
次の中国で名をなす会社が出てくることに
間違いはありませんので、
過去2期3期にさかのぼって業績を調べたところ、
目の醒めるような企業が1社もないことに
改めてびっくりしました。
しかし、薬の需要は有無を言わさず増大する方向にあります。
しかも政府が薬価の上昇に対して神経質になっており、
薬価の抑え込みに乗り出しているために、
製薬会社が悲鳴をあげていることがわかりました。
いろいろ調べているうちに山東省の臨沂というところにある
羅欣薬業という小さな製薬会社が
政府のきびしい薬価規制のさなかで孤軍奮闘して
かなりの業績をあげていることに気がつきました。
一ぺん訪問してみようと思って調べたところ、
上海からしか直通の飛行機が1日に1便しかとんでおらず、
それも夜の8時すぎの出発ですから
10時すぎでないと到着しません。
それでも行くことに決めて会社に連絡したところ、
秘書室の若い者が飛行場まで
私たちを迎えに来てくれることになりました。
私は北京の秘書を連れて二人で行ったのですが、
飛行場からホテルまで行く車の中で
会社のことについていろいろ質問をすると、
24才の青年が何と会社の今期の売上げの予想から利益目標額まで
スラスラと答えるじゃありませんか。
びっくりして
「おたくの董事長さんって何をやっていた人ですか」ときいたら
「薬のセールスマン上がりです。
18年前に人民元2万元からスタートしたのです」
ときいて思わず目を丸くしてしまいました。
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