中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2755回
日本人の目で見ないで下さい

株を買いはじめてから、私はアポイントメントをとって、
南京市の本社まで大賀伝媒の賀超兵董事長を訪ねて行きました。
ついでに郊外にある印刷工場も見せてもらいました。
同行したうちのスタッフは
日本の広告会社のイメージとあまりに違いすぎるので、
「頭がなくて身体だけで動いているような会社ですね」
と酷評していましたが、私は
「待て待て。
日本と同じ感覚で中国の広告会社を見ると間違ってしまうよ」
とたしなめました。

というのも、中国のテレビはすべて国営だし、
新聞雑誌もすべて政府の統制下におかれているので、
広告屋の活躍できるスキマは精々、
戸外の広告と買物袋くらいのものです。
あまり大きな期待をかけても昔から言われているように
「当てとフンドシは向うからはずれる」
にきまっています。
実際に董事長さんと話をして見ると、
稀れに見る頭の柔い人で、
こちらが言ったことはすぐ耳に入るし、
ちょっと参考までに提案したことでもすぐに話に乗ってきます。
「いま力を入れていることは何ですか」ときくと、
「立て看板はふえても精々年に20%くらいです。
ですから今はこんなことを手がけていますが」
と例の「動く看板」を見せてくれました。
団地の入口みたいなところに立てて、
広告する内容はリモート・コントロ−ルで変えることができます。
年間広告費としての収入は3万元、
支出は年間管理費が8千元と、
初年度の建設費が1万2千元です。
ですから初年度は一つ建てても1万元しか収入はありませんが、
次年度からは2万2千元になります。
ことしは北京だけでも既に6千個建てたけれど、
オリンピックまでには
1万個にふやす計画を実行中だということでした。

こんな話をすると、
日本人のうちにはハナからバカにしてかかる人がいますが、
僅か1万個でも初年度は1億元、
次年度からは2億2千万元の粗利になり、
それが全国的スケールで拡大して行けば、
大へんな身入りになります。
それもとらぬ狸の話ではありませんから
「でも御社の配当は雀の涙ほどの配当ですね」と言うと、
「本当に、すみません」と頭を下げるし、
「たとえ雀の涙でも無配にはしないで下さいよ」と言うと、
無配をすぐ有配になおす人だったので
とうとう私は社外で一番の大株主になることを
承知してしまったのです。





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2007年9月25日(火)

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