中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2723回
お金に国籍の色分けはありません

アメリカでは30年も前に
いまの日本のような産業界の沈滞が起ったので、
工業生産でメシの食えなくなった連中が
知恵を搾って新しいメシのタネを探がしてまわりました。
物をつくっても日本やアジアのコストの安い国と競争できないので、
つくる仕事はそれらの国々に任せ、
自分たちはその何倍もの値段で物を売る
流通過程で稼ぐ道を選びました。

しかし、飛行機を売ったり、武器を売ったりした代金だけでは
輸入した商品の決済に間に合わないので
ドルを印刷して相手に渡し、
そのドルを叩き売られたのでは
ドルが大暴落して大へんなことになるので、
相手国の手に渡ったドルを預かって
「お金でお金を生む事業」
に投資するビジネスをスタートさせました。
外国人にもドルを持ってもらえば、
外国人もドルが大暴落すると困りますから、
一緒になってドルを支えます。
そのおかげでドルの大暴落に見舞われずに今日に至っているのです。

しかし、沈滞の続くアメリカ国内で
お金の儲かるM&Aの対象は粗方、
開発しつくしてしまいましたので、
あとは海外まで
荒稼ぎのタネを探がしに行かざるを得なくなりました。
幸にも、アジアの各国で金融操作の手違いが起り
韓国やタイで通貨不安が発生したので、
アメリカ資本がそのピンチにつけ込む余地があったし、
日本でもバブルの崩壊による企業の弱体化と
外資の流入に対する制限の緩和があって、
逆にドルを円に換えて
日本株に投資するチャンスが大幅に拡がりました。
無利息に近い日本に外貨が大量に流入して日本株買いが進んでも
日本円が高くなるどころか、逆にずっと割安が続いたのは、
日本から大量の円がその逆の方向に動いたことを物語っています。

そうなると、日本のお金は外へ出ますが、
その逆に大量の外資が日本に入ってきて
日本株の買い占めに動きます。
その加勢をする形で日本の銀行が更に融資をすれば、
日本人がアメリカ資本
(というよりアメリカの投資銀行に集まった世界の資金)の
日本株買占めの手伝いをすることになります。
もともとお金には国籍の色分けはないのですから、
不思議な話ではありませんが。


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2007年8月24日(金)

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