第2599回
自動車株は投資の対象にはなっても
衣食住というからには、
食べることと着ることの次にお金を使うところは
住むところということになります。
衣や食はお金を払った途端に
お金の方が消えてなくなってしまいますが、
住居は財産価値のあるものですから、
住に対する中国人の執着ぶりには只ならぬものがあります。
しかし、住に到着する前に、
さして財産価値のない、但し、虚栄のシンボルになる
自動車という乗物が割り込んできます。
家と自動車とどちらに優先的にお金を使いますかときかれたら、
年齢や環境の差によっても違いがありますが、
いまの若い者ならどこの国の人でも、
ほとんど自動車を優先させるでしょう。
中国だけがその例外であるわけもありませんから、
中国でも自動車の方がマイホームより先に
お金の支払われる対象に既になっています。
ことしの新車の生産台数は800万台と見込まれていますが、
年々それが2割か3割ずつ増産されるとすれば、
自動車産業が中国の一大産業になることは
衆目の一致するところです。
したがって世界中の有力自動車メーカーがこぞって中国に進出し、
現地のメーカーと合弁で生産にしのぎを削っていますが、
衆目が一致するということは
空前の競争の対象になるということでもありますから、
勝負がつくまでにまだかなりの時間がかかります。
また必ず敗者が出ることも間違いありません。
現にことしは値引き競争が一段落して、
業界も快復に向っているところですが、
どこのメーカーも株価に往時の勢いが見られません。
少くとも当分はどのメーカーが勝ち残るのか、
答えはまだ出ないと言ってよいでしょう。
その上、自動車は償却資産ですから、
土地や建物と違って投資の対象になるものではありません。
したがって自動車メーカーの株は
資産インフレ時代の投資の対象にはなったとしても、
自動車は投資の対象にはなりません。
不動産会社の株もその扱っている不動産という商品も、
共に資産インフレ時代の好個の投資対象になるのと
根本的に違うところです。
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