第2579回
流動性過剰に対する中国人の思い違い
「過剰流動性」のことを
中国語では「流動性過剰」と言います。
何でも返り点をつけて反対にひっくり返さないと
気がすまないのです。
でも本当はどちらも「危険物」で、
うまく扱わないと、大爆発を起して厄介なことになります。
貿易黒字によって過剰流動性が惹き起された時も、
日本にとってははじめてのことだったので、
日銀や大蔵省の幹部にとっても、
プロの経済専門家にとっても
どう扱っていいのかわかりませんでした。
私は貿易黒字が定着すれば、お金がふえるから、
あまったお金は不動産や株に投じられるだろう。
だから「こわがらずに土地を買いなさい」
とアドバイスすることくらいしかできませんでした。
それはそれで間違っていなかったのですが、
まさか坪当り300万円だった青山通りの土地が
忽ち1000万円にはねあがり、
更に1億円にまで押し上げられるとは
夢想だにしていませんでした。
そういうことが現実に起るまで
政府も日銀も何一つ手を打つことができなかったのです。
結果として空前の円高になり、
日本人は高くなった円を持って
海外を我が物顔で旅行できるようになりましたが、
国内の物価は世界一の高水準になり、
金持ちになった分だけ
豊かな生活を享受するようになったわけではありません。
過剰流動性は日本に空前の資産インフレをもたらし、
やがてその反動で多くの企業や
企業に融資をした銀行の倒産を招き、
その躓きから立ちなおるのに20年もの歳月を要したことは
皆さん、ご体験の通りです。
いまそれと同じことが中国で起ろうとしています。
日本と違うところは、
外国企業が日本の過剰流動性の片棒を担がなかったのに比べて、
世界からの企業誘致に力を入れてきたので、
世界中から進出した外国企業も
一緒になってお神輿を担いでいることです。
そのために流動性過剰は外国によってもたらされたもので、
自分たちではどうにもならないことだといった
責任転嫁が起っています。
日本よりもっと厄介なことになる兆しが
見えかくれしています。
|