第2527回
邱永漢「西遊記」の新刊が出ました
邱永漢「西遊記」は
ソ連がスプトニックを打ち上げて
世界中の話題をさらった年に、
「中央公論」誌の編集長から話を持ちかけられて、
5年4ヵ月にわたって同誌に連載したものです。
1回が原稿用紙で40枚ですから
何と2560枚も延々と書き続け、
8回分で1冊の分量に達する度に
単行本として全8冊、中公の出版部から出版され、
のちに文庫にもおさめられた私の一番長い著作です。
連載をはじめる時、
竹森編集長は挿絵を前田青邨画伯にお願いしましょうか
と私に持ちかけてくれましたが、
まだ30代で駆け出しの私に
美術界の重鎮は不釣合いだと考えて、
当時まだ無名に近かった影絵の藤城清治さんにして下さい
と頼みました。
おかげで五年四月にわたって藤城さんにつきあっていただき、
それがきっかけで藤城さんは
影絵の第一人者として今日に至っています。
私の「西遊記」の第1巻が刊行されてから
既に48年の歳月がたっていますが、
今回、装を改めて
魁星出版から同じく全8巻で出版されることになりました。
その第1巻が出来上がっていま店頭に並んだところです。
今回は挿絵も村上豊さんが凝りに凝って、
全8巻にわたって画いて下さっています。
これから月に1冊ずつ発行されますので、
1冊目で退屈しないですんだ方は
どうぞ最後まで手にとって読んで下さい。
私の「西遊記」はあくまでも邱永漢「西遊記」で、
一度、手にとったら
終るまでやめられないように書いた積りです。
嘘と思ったら手にとってパラパラとめくって見て下さい。
吉川英治先生も中山伊知郎先生も私の魔術にかけられて、
とうとう私の本の推薦文まで書いて下さいました。
どうやら半世紀に及ぶ風雪には耐えられたようです。
恒例によってこのコラムの愛読者に
抽選により10名様に私のサイン入りの本をさしあげますので、
ふるってご応募下さい。
なお選にもれた人は
ご足労でも本屋さんに一走りして下さい。
(邱永漢「西遊記」第1巻 魁星出版刊 1800円+税)
|