第2519回
まだ酔いから醒めきれない地方自治体
日本の国の富の蓄積は工業化によってもたらされたものです。
したがって工業化の勢いが衰えない限り、
日本は安泰です。
ところが、工業は同じことをただくりかえしていて
成り立つものではありませんので、
時代の変化にうまく対応しなければなりません。
自動車メーカーひとつ例にとっても、
開発の初期と現在ではスケールがまるで違うし、
技術やデザインに対するお客の要求も違うし、
更にはどこに工場をおくかも、
昔とは考え方がまるで違ってしまっています。
問題はそうした成熟化の過程で、
社会にどういう変化が起るかということです。
高度成長がはじまると、
最っ先に起ったことは人口の大移動です。
工業は大都会の周辺か、新しく計画された工業都市に集中し、
そこで働く人々を全国に呼びかけて集めたので、
職を求める人々が働き口のないところから移動してきました。
そのために労働力の大移動が長期にわたって起り、
日本国中が過密地帯と過疎地帯に二分されてしまいました。
にも拘らず議員さんの数はそのまま据置かれたので、
当選する票数は過密地帯と過疎地帯とでは年と共に大きくひらき、
裁判沙汰にまでなっています。
それでもまだ工業の成長が続くと、
地方に根の生えたまま動こうとしない労働力をあてにした
生産事業が地方に工場をつくるようになり、
過疎地帯にまで生産圏が拡がるようになりました。
思えば、この時期が日本の国における
「地方の時代」の全盛期だったのです。
日本の労働組合は同じ会社である限り、
本社も地方工場も一つでしたから、
賃金にも労働条件にも大した違いはありません。
地方にいても東京や大阪と同じ賃金のレベルだったら、
地方にいて大都会並みの生活を享受できます。
とりわけ地方自治体は税収に恵まれるようになり、
豊かな財源によって気前よく無駄使いができる立場になりました。
その酔いからいまも
醒めきれないでいるのが日本の地方自治体なのです。
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