第2331回
何でも共産主義のせいにしてはいけません
中国にも反日抗日のムードは強いけれど、
日本にも中国を侮ったり、
敵意をむき出しにした風潮は劣りません。
そういう人たちがお互いにやりあうのを封ずることはできませんが、
未来志向型の人はもっと大らかに対処することが望ましい、
また対処するだけの度量もあるだろうし、
また知恵もあると私は楽観しています。
でも、ジャーナリズムの一般的な風潮に遮られて、
間違った先入観を持つことは往々にしてあることです。
たとえば、日本は共産主義の政府に支配されたことがなく、
共産主義にはかなりの敵意と偏見を持っています。
なぜ資本主義先進国に抬頭した共産主義が
工業的に遅れた農業国や後進国で勢いを得、
政治体制にまで発展したかという歴史の動きまで思い及ばず、
ただそれを敵対的に受けとめているので、
共産主義の悪いところばかりが目につくだけでなく、
悪いことは何でも共産主義に押しつける傾向すらあります。
たとえば、経済は既に成長過程に入り、
外貨準備にしても世界のトップに立つようになったのに、
一向に政治の民主化が進まないのは
共産主義による一党独裁のせいだと
単純に思い込んでいる人が多いようです。
私に言わせると、
いまの中国で起っていることは日本より資本主義的で、
共産主義の話をする人など先ず出会ったことがありません。
いま政治を動かし、
資本主義の前に立ちはだかっているのは、
共産主義ではなくて
何千年も続いてきた中国独特の官僚専制体制です。
共産主義を旗印にして毛沢東が天下をとりましたが、
毛沢東が共産王朝の皇帝になっただけのことであって、
毛沢東は死ぬまで歴代王朝の始祖と
同じ扱いを受けて往生しました。
その配下で御用を受け持つようになったのは、
人が代わっただけで古くからの官僚独裁を
連綿として受けついでいるのです。
したがって新しい中国にとって障害になっているのは、
旗印になった共産主義ではなくて、
共産主義を錦の御旗にした中国伝来の官僚制度なのです。
これをどうやって打ちくだくかが中国の次の最大のテーマなのです。
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