中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2313回
新しい人材派遣業が誕生します

昔は就職の世話をする人のことを周旋屋と言いました。
今ならハロー・ワークとでもいうのでしょうか。
失業者の多かった時代には就職を頼む側は辞を低くして
頼まなければなりませんでしたし、
そういう求職者を連れて
雇ってくれそうな旦那の前に出る時は
周旋屋も頭をさげることからはじめなければなりませんでした。

高度成長がはじまると、
求人は求職より多くなりましたので、
彼我の立場は逆転し、
周旋屋の方が求人側から頼まれて
地方の学校などへ集団就職の打診に行くようになりました。
中学や高校を卒業して就職に応じてくれる若者は一頃、
「黄金の卵」と呼ばれるほど珍重されたこともあります。

高度成長が終って、安定成長に変わり、
更にバブルがはじけてリストラの時代になっても、
就職戦線にそれほど異変はなく、
中高年齢層の首切りは盛んになりましたが、
新卒の中には逆に仕事の選り好みをする人がふえ、
アルバイトで身すぎ世すぎをする人もあれば、
ニートと呼ばれる就職も職業訓練も拒否する遊民の大群が
発生するようになりました。
豊かな世の中になって親がかりで遊んで暮らしても
飢え死にする心配がなくなったので、
いわゆる3Kに属する分野では
人手不足が深刻化するようになったのです。

その一方で、
企業は終身雇用制と年功序列給の重荷に耐えられなくなり、
賃上げや年金を支給しないですむ派遣社員を
受け入れるようになったので、
人材派遣業がニュービジネスとして成り立つようになりました。
はじめはホワイトカラーの派遣からはじまりましたが、
やがてブルーカラー専門の派遣業が定着し、
自動車メーカーから電子産業に至るまでプロのチームが
そっくりそのまま派遣されるようになったのです。
賃上げや退職金の支給という
頭の痛い人事問題から解放されるようになったので、
少々くらい余計にお金を支払っても
そのまま経費としておちる道を
各企業が選ぶようになったのです。


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