第2229回
貧乏人は福祉国家に住みましょう
貧しい社会は多くの失業者を抱えて
食うや食わずの生活をしています。
飢饉や戦乱があると、多くの餓死者を出すのは
決して珍しいことではありませんでした。
それが工業化と生産性の向上によって
失業者も含めて餓死者を出さない豊かな社会になると、
職につけない人とつかない人が逆にふえるようになって、
所得のある人たちから税金の形で徴収したお金で
これらの人たちを養うようになりました。
それだけの余裕があるようになっただけでも、
人類社会の進歩であると言えるでしょうが、
福祉があまり行き届いて、
痒いところまで手が届くようになると、
怠け者が急増して働く人も働かなくなる心配があります。
その一方で、税金が重くなりすぎて、
その負担に耐えられなくなった人たちが
税金の安い国に逃げ出すことも起ります。
たとえば老人年金のなかった時代は、
年をとって身体の不自由になった老人の面倒は
子供たちが見るのが常識でした。
姥捨山の故事もありますが、
親の面倒を子供が見る習慣の社会では
家族のきずなは今日よりずっと強靭でした。
国が税金を使って親子の間に割り込むようになると、
少家族化は一挙に進んで、
老齢化がはじまると、
年寄りたちは不安をつのらせる一方で、
国は赤字で悩むようになりました。
その上に、失業者を支えるだけでなく、
何もやらない人たちまで養わなければならなくなりましたから、
国の台所が火の車にならないわけがありません。
このまま続けば、増税になることは目に見えています。
さしあたり消費税が5%から10%、10%から15%とふえて、
やがて25%に達することは避けられません。
その一方で税金の取れそうなところから取ってやれというのが
徴税当局の至上命令になりますから、
お金持ちは海外に逃げ出すようになります。
成熟社会とは国の世話になる人たちがしっかり根をおろして、
税金を搾りとられる人たちが逃げ出す社会のことだと定義づけても
そんなに的をはずれたことにはならないと思います。
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