第2208回
未来のお土産物屋を目指す「種字林」
中国の古道具はお土産物として売れるものではありません。
また売れない方が私としては長く楽しめるし、
そのうちに値上がりをして財産価値も上がります。
しかし、コレクションは
古い文化の匂いを未来に遺すためのものですから、
それをきっかけとして他の文物にも親しめるようになるし、
違った分野の民芸品に手を伸ばすこともできます。
そうなると書画からはじまって、
織物、刺繍、さては小物のアクセサリーまで、
いままで気にもしなかった物にまで
注意ぶかく目を向けるようになります。
そういう日用品やら生活用品の愛好家は
私が氣づくよりずっとたくさんいるのです。
いまのお土産物屋さんには
そういった人たちの欲しがる物は何も売っていません。
書画にしても日本の家にもう床の間なんかないのに、
床の間にしか掛けられない掛軸をいまも売っています。
その掛軸に書いてある辞句も
いまの人には何のことかさっぱりわからない内容で、
見る人の関心をそそりません。
「種字林」のショー・ルームは三全公寓にありますが、
古い家具を見に入った人が
そこに飾りつけられた書画や少数民族の刺繍や農民画を
喜んで買って帰ります。
三全公寓は観光客を泊めるところではありませんから、
観光客の姿は見当たりませんが、
もし「種字林」の出店をホテルの中に出したら、
いまお土産物を売っているようなくだらない店を出し抜いて、
結構、お客を集めることになるのではないか。
突然、思い当る節があって、いまはまだ早いけれど、
一年に百万人も日本人が北京に遊びに来るようになったら、
たとえばバンコックにある
ジム・トンプソンのシルクの店のように、
北京にきた日本人が必らず一度は寄る店を目指そうじゃないか
と考えるようになりました。
いまはまだまだですが、
以来その方向に向って商品集めをやるようになりました。
ハイQでも農民画についで上田尾一憲君の
「種字林番の独り言」が近くはじまりますが、
文章だけでなくそこに陳列されている実物も
どうぞ見に来てあげて下さい。
北京に来たからには一度は見に行くだけの価値のある
コレクションになりつつあります。
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