中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2207回
古い中国家具のコレクションをはじめたわけ

私が北京に「種字林」という屋号の会社をつくって
中国の古い家具のコレクションをはじめた時、
私としてはコレクションをするのが目的で、
売ることは眼中にありませんでした。
古い家をこわして高層マンションに代われば、
古い家で使っていた家具は
不要になるばかりでなく邪魔になります。

それを古道具屋に二束三文で叩き売りますが、
中国の年代物の家具に興味を示すのは
外国人の好事家だけです。
北京と上海にそういう古い家具を扱う店が
何軒かありますが、外国人に高い値段で売りつけています。
はじめは私も珍しがって
そういう店で欲しい物を買いましたが、
そのうちになくなってしまうものだからいまのうちに
蒐められるだけ蒐ようと考えるようになりました。
というのも私は台湾で
三十何年前に同じような家の建てかえが起った時、
古道具屋や夜店に出まわった古道具を
何千点も買いまくった前歴があるからです。

この時のコレクションは
自分の周囲においておいても仕方がないので、
私の生まれ故郷である台南市に寄付しました。
インターネットで邱永漢というところを叩くと、
たくさんある私関係の情報の中に
永漢民芸館という紹介記事が出てきます。
台南市のゼーランジャ城という
オランダの古跡のある安平というところにあって
一般の人が観覧することができるようになっています。
いま買えばかなり値の張るものでしょうが、
鄭成功の時代から日本が統治した時代までの
高砂族や大陸から移住してきて定着した
いわゆる台湾人たちの生活模様が
よくわかる遺留品が集まっています。

そういう前歴があるので、私は
「良いブドウ酒と中国の古い家具は
 売れない方が値打ちがでるから、
 売ることより仕入れに力を入れてくれ」
と言って担当者の尻を叩いてコレクションをはじめたのです。
その時、私の頭にあったのは
いまに一年に百万人の日本人が北京に観光にくる時代がくる。
その時に商売になるお土産物屋さんを目標にという事でした。


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