中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2202回
洋服ダンスの中で一大革命を起したら

家の中のゴミ置場をふやしたら、
景氣の恢復につながると言いましたが、
デパートやショッピング・センターに行った時に、
買いたくなるような魅力的な商品がないと
お金は動いてくれません。
「金は天下の廻わり物」と言いますが、
お金が物と反対の方向に動いて、
その度に物が人の手に渡ることが前提です。
そのためには人が慾しがる物をつくり出す必要があります。
新しく買ったものが
いままでタンスの中や茶の間や
応接間にあったものを追い出して、
追い出された物が逃げ込むスペースが同じ家の中にあると
家の中の入れ替えがスムーズに運ぶのです。

ですから直接の動機になるのは
あくまでも人の欲しがる物です。
もちろん、快適な家は人の欲しがる物です。
しかし、家は一生物と言われるように、
一生に何べんも取りかえられるようなものではありません。
まただからこそ政府が先頭に立って
運動を起す必要があるのです。
その次は自動車です。
かつて自動車の売り上げは一国の景気を左右しました。
しかし、これだけ自動車が普及すると、
逆に景気の動向が
自動車の販売台数を左右するようになっています。
自動車は家計の中で動産として
最も大きなパーセンテージを占めているので、
決してバカにできませんが、
自動車の販売台数を政策によって増減することは
さすがにどこの国でも行われていません。
もはや生活の必需品になってしまった
車を乗りかえるかどうかは
車を買う人の判断に任せられているからです。

そうなると、食品の次は
衣料品や日用品ということになります。
むろん、旅行や健康や医療も景気を大きく左右します。
しかし、デパートや商店街で
売っている物の中だけに限って判断すると、
衣料品売場がどうしても目につきます。
なかでも一番早くから駄目になって
一番置き去りにされているのが紳士服売場です。
この当りに焦点をあてて
洋服タンスの中一杯に詰った男物衣料を
全部反古にするようなファッション革命を起したら
産業界があわてて目を醒ますのではないでしょうか。


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