中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2144回
「熟年のおしゃれ」がテレビの人気番組に

老齢化社会になると何が起るか、
そして何を必要とするようになるか、
商売をやる人なら誰でも一応は考えます。
すぐに思いつくのは老人の面倒を見る仕事です。
あッという間に
老齢化社会になってしまいましたので、
最近は年寄りの住む養老院や看護施設も
全国的な規模でふえました。
同じ傾向が台湾でも起っているので、
日本でやっていることを
台湾でもやれないだろうかと考えて、
研究してみましたが、
台湾では寝たきり老人に対する
国からの交付金制度が整っていないので、
病人の家族が面倒を見ることになりますが、
お金のある人が
慈善事業としてやっている病院だとわかると
お金のあるようなことを言って老人を担ぎこみ、
やがて一家でドロンをきめこんで
病気の老人の面倒を
病院に押しつけるケースが多いと、
病院をやっている知人からきかされて、
びっくりしてやめてしまったことがあります。
そういうところに民族性の違いがあるだけでなく、
文明のレベルの違いがあることを
嫌でも認識させられたことがあります。
と言って家族が面倒を見る代わりに
福祉国家が経費を負担するとなると、
重税が避けられなくなります。
その負担に耐えかねて、
国から逃げ出す人もふえます。
平均寿命が高くなると、頭の中で考えるより
ずっと多くの頭の痛い問題が発生するのです。

しかし、老齢化がすすんだら、
病床に就く年寄りばかり
ふえるわけではありません。
病床に就いても
死ぬまでに時間のかかる時代になりますが、
少くとも病気になって寝込むまでは
元気でピンピンしている年寄りの方が
ずっと多いのです。
平均年齢が上がっただけで、
使うお金も自分でちゃんと持っており、
三度のメシもちゃんと食べれば、
海外旅行に行くことを楽しみにしている人たちも
たくさんいるのです。
本当の老人マーケットはこういう人を相手に
これからはじまろうとしています。
病気の番組ばかりでなく、
熟年の離婚や海外旅行の番組も最近、
俄かにふえてきました。
もう間もなく「熟年のおしゃれ」の番組が
テレビの人気番組になることが
充分、期待できる時代がきます。


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