第2140回
レストランは支店を出さないのも見識
お金が思うように儲からなくなったら
誰でも財布の紐を締めにかかります。
サラリーマンも昇給がなくなった上に、
いつクビになるかわからなくなったら、
節約を第一に考えるようになります。
とりわけ会社は冗費を一切カットしますから、
かつて社用族相手に商売のできた料亭やバーは
大半が姿を消してしまいました。
会社のお金で飲み食いができなくなっても、
おなかは空きますから、
メシを食わないわけには行きません。
するとサラリーマン向けの手頃なレストランとか
居酒屋が必要になります。
そうした新しい社会需要が夜の町だけでなく
サービス産業全体の形を変えるので、
一時期、私は新しいレストランのチェーンが
成長産業として証券市場に登場してくると考えて
投資家たちの注意を喚起したことがありました。
私自身もそうした株を買ったりしましたが、
レストラン・チェーンの成長は
あまり長くは続きませんでした。
レストランは常に常に新しい努力が必要で、
それが続かないレストランは
すぐにも利用者にあきられてしまうからです。
所詮、レストランや料理屋は
水商売と言われているくらいですから、
いくら大きくなっても
スケールは小さなものです。
またそれだから、小資本でも起業できるし、
廃れる店があれば、
それと入れかわる店が
次々と出現することにもなります。
このことは恐らく今後も
くりかえし起ることでしょう。
もちろん、新しいチェーン・レストランも誕生します。
しかし、チェーン店で提供される料理は
60点あれば大繁盛するようなレベルですから、
本当に食いしん坊を満足させることはできません。
自己主張と見識のあるオーナーシェフは
店を次から次へとふやすよりも、
一軒の店を守って
完璧を期する道を選ぶことになります。
ドンドン店をふやすことが
レストラン業で成功したことにならないのです。
一軒の店だけを守って
多くのグルメにひいきにされる方が
成熟社会では立派な商売になると私は見ています。
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