第2131回
どうせなら私を先に金持ちにして下さい
いまの中国はお金持ちになりたい人ばかりです。
お金持ちになるためにも
大へんな努力と競争に打ち勝つことが必要ですが、
戦争をしかけて相手の物を奪い取るよりは
人にあたえる損害は少いと思います。
お金儲けの神様范蠡も、呉の国を滅ぼして
その領土や財産を奪い取る
越王勾践の軍師をつとめることに愛想をつかして
商いで金をつくる道へ鞍替えしたのですから、
軍師でありながら戦争を良い事と思わず、
「勇者逆徳也、兵者凶器也」
という言葉を遺しています。
陶朱公になった范蠡は
天体の動きから凶作になる年と
豊作になる年の見分けがつき、
豊作で作物の値段の下がった年は
倉庫が一杯になるほど穀物を仕入れ、
凶作の年になると暴騰するまで待たずに
10%値上がりしたら穀物を売り出して
困った人たちに喜ばれたのです。
お金儲けをしながら
人に感謝される道もあるわけで、
人に喜ばれ世間に功献するのが
金儲けという金持ちの生き方も
立派に成り立つのです。
共産主義は平等ということにこだわりすぎて、
人々の生産意欲を痛めつけ、
何百万人という餓死者まで出しました。
これではいけないと気づいた小平が
「黒い猫でも白い猫でも鼠をとる猫は良い猫だ」
というスローガンを揚げ、
また国を豊かにするためには
先に金持ちになる人があってもいいじゃないかと言って
「先富論」を打ち出しました。
改革開放策は12年にわたる自由市場と
経済特区の実験に成功したあとに
打ち出したものですが、
人間の労働意欲と経済の原則をよく心得た
効果的な政策であったことは
今日の中国の経済の発展が
証明してくれている通りです。
恐らく陶朱公が今日まで生きていたら、
改革開放政策に
いち早く賛成したに違いありません。
陶朱公の朱とは
中国の御殿の朱の柱に使う塗料で
産をなしたという意味ですから、
陶朱公の祭壇の両側の朱の柱には
「黒猫白猫皆好猫、先富後富我先富」
と金色の聯を彫ってもらう積りです。
拝む人は思わずニヤリとすることでしょう。
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