第2094回
でもジーパンは中国産の1500円也です

「どうしてそんな高い下着を着るんだよ?」
ときくと、若い人は
「そこが僕たちのおしゃれのポイントなんです」
と答えます。
考えてみると、
いま私のそばで働いている人たちは
ほとんどが30才前後で、
もっと年をとったのは総経理(社長)をしてくれている
少し前まで30才前後だった連中です。
あと一番年をとっているのは私一人だけです。
私と同年輩の人たちは大抵、
第一線を退いて庭いじりか、
孫の相手でもしていますが、
私は不しあわせにも
まだ働かないと生きていけないのです。

もちろん、私が親分であり、
仕事をやるお金は私が出していますから、
みんな私の言うことをきかないわけには行きません。
でも私よりよく働くし、よく食べるし、
私が見習わないといけないこともたくさんあります。
皆が毎日、着ている服を替えるのに、
私がズボラして
毎日、同じ服を着ているわけには行きません。
同じように服を着替え、
同じように動きまわるとすれば
年寄り臭いことなどしておられません。

とうとう私は一枚2万円もする
イタリア製の肌着を買いましたし、
その上から着るワイシャツのボタンも
上から3つ目までとめないようになりました。
私のワイシャツは英国産の
オーダー・メイドだったのですが、
デパートに行って
いまハヤリのカッコのいいのを買うようになりました。
いくら高いのを買っても
いままで使っているものより
高くはありませんから大丈夫ですが、
いまの若者は同じワイシャツでも
わざわざ皺のよったアイロンをかけても
元に戻らない生地のものを着るときいて、
それも買ってきました。

こうなると、
あとはボロボロにやぶれたジーパンを
穿くかどうかです。
それから大きな飾り止金のついたベルトを
わざわざ人に見せびらかすためにはめるかどうかです。
さすがの私もこれだけはやめておこう
ということになって
温州産の一枚1500円也のジーパンを穿いています。
これがまた7万5千円の破れジーパンよりは
ずっとカッコがいいんです。


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