第1921回
どうにもとまらないのが経済成長の特徴
どこの国でも高度成長期は
先ず輸出が伸びます。
国内生産に付加価値をもたらす動きは
先ず輸出からはじまるからです。
ところが、輸出が伸びはじめると、
それによって生じた付加価値の
国内における分配がはじまります。
はじめはほんの僅かでも、
ふえた所得が消費に向うと、
その消費が更に生産を刺戟しますから、
輸出によって
生産がふえるのと同じ効果をもたらします。
日本がその良い例です。
日本人は誰でも輸出がふえて
外貨が貯まるようになったから
日本が金持ちになったのだと信じ込んでいます。
でも輸出は最盛期でも
国民所得の10%か、12%で
(為替レートが動くので、
正確な数字は計算できません)、
あとは国内における個人消費と
公共消費によって成立っています。
消費がふえる方向にあれば、
生産の拡大は続きます。
ついでに申せば、
日本が不景気に落ちこんだのは
輸出が減ったからではありません。
日本のどこの家庭も不要なものまで買い込んで、
日本人が日本製品で腹一杯になってしまったからです。
景気を刺戟したかったら、
無駄な消費でも奨励しなければならないのに、
逆に消費税をとって消費を抑え込んだから
日本は空前のピンチにおちこんだのだと
私は見ています。
中国の場合は
かつて日本が辿ってきた経済成長の
まだ初期の時代を走っているところです。
ただ人口も面積も日本の10倍も
それ以上もありますから、
一人当り10ドルか20ドルていどの消費の増加でも
天文学的数字になってしまうのです。
私は毎月のように中国大陸に渡り、
全国各地をとびまわっていますが、
どこへ行ってもレストランは
いままで来たことのなかった人で一杯、
道路はいままで自動車に乗ったこともない人を
載せた自動車で渋滞しています。
新しい消費の時代がはじまったのです。
基本的にこの動きは
輸出とか国内消費の区別をする必要のない経済現象です。
人民元の切り上げが
一時的に産業界にあたえる影響は
小さくはありませんが、
それは中国の産業界が、
一息入れるところだと考えてよいと思います。
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