第1840回
夜空を見上げると日本全体に“荒城の月”

最近は地方の自治体や銀行が
予算を削るようになったせいか、
地方の講演がめっきり少くなりました。
私が年をとって
お呼びでなくなったせいもあるでしょうが、
たまに地方都市に行くと、
駅前や商店街がすっかりさびれているのに
思わず目を見張ってしまいます。

景気のよかった頃は、
町のはずれにショッピング・センターができたりして、
昔からの商店街が活気を失う光景が見られましたが、
最近は町のド眞ん中にある
デパートや銀行の扉が下りたままで、
歯抜けの姿を曝しているのに
ぶっつかることが多くなりました。
温泉宿などに至っては
30年前と同じ姿で
古びるに任せているところが多く、
宿に訪ねてきた土地の人にきくと、
どこそこの工場が閉鎖してしまった
という話ばかりです。

こんな風景は戦争が終ったあと、
地方都市では、
必らずしも珍しいものではありませんでした。
そこへ高度成長がはじまって、
大都市周辺で人手不足が深刻化すると、
都会から人買いの連中がやってきて、
その口ききで大都会への移動が
見られるようになりました。
地方で食えない人たちは、
もっといい条件でやとってくれる
大都市へ動けばよかったのです。
動いたと言っても、
同じ国の中ですから
言葉の不自由もなかったし、
移住に対する制限もありませんでした。
だからそれほどの違和感がなくてすみました。

しかし、いま地方都市の駅前に立って、
荒涼とした町並みを見ると、
子供の頃、ハヤった
「荒城の月」を思わず口吟みたくなります。
氷川きよしの「荒城の月」を
そのまま撫でたようなそっくりさんの歌が
人気を得ている背景が
いまの地方都市にはみなぎっているのです。
したがってこのままここにとどまっているよりも
「どうにかしなければ」という心のあせりが
若い人たちの心を痛めつけています。
しかし、今度ばかりは、地方だけではありません。
夜の空を見上げると、
日本全体に「荒城の月」が浮んでいるのです。


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