第1797回
グローバル化の先陣は力士の世界です
国境の壁が崩れ落ちて、
誰でも自由に国境を乗りこえることができるようになれば、
グローバル化は時の勢いです。
それを自分たちの商売を
よその国の人にとられたと言って
排他的になるのはその人の勝手ですが、
自分たちの活躍する舞台が拡がったのだと
考えることができないものでしょうか。
私はスポーツにはあまり縁がなくて、
ゴルフ場を持っていても
ろくにゴルフなんかやりませんが、
相撲だけは子供の頃からずっと見て育ってきました。
横綱審議会の委員を頼まれても、
ちゃんと意見が述べられるくらいの知識は
持っている積りです。
その私がもう20年も前から、
この調子で世の中がすすんで行ったら、
いまに日本人の子弟で
相撲部屋に入門する人がいなくなる、
同じ国内でも貧乏な寒村に行って、
相撲に向いた体格の子を探がし出して、
「東京に来たら、土俵にお金がおちているぞ」
と勧誘しても
誰も応じてくれる人がいなくなる、
辛い修行に耐えかねて
子供が逃げて帰っても叱る親がいなくなる、
未来の横綱が日本人でなくなる時が
必らず来ると予想しました。
親方たちもやむを得ず、
世界中の貧乏国に目を向けるようになるから、
日本相撲協会は日本国際相撲協会と
名を変えざるを得なくなるだろうと
冗談半分に本にも書いたことがあります。
弟子集めは先ずハワイからはじまって、
韓国、台湾ではあまり成果があがりませんでしたが、
気がついて見たら、
モンゴルからロシア、ヨーロッパにまで及んで
黒海とか欧州とか、
体力で一勝負しようと志す男たちが
世界中から集まってくるようになりました。
戦後になってからはじまった先端産業よりも、
日本の伝統的な相撲の方が
一足先にグローバル化を実現してしまったのです。
「スポーツに国境はない」
「音楽に国境はない」と言いますが、
横綱に日本人がなれなくて
ハワイやモンゴル出身がなることに
一抹の淋しさがつきまとうのはやむを得ません。
でも日本人がノーベル賞を
受賞するのも珍しくなくなったし、
世界のソニーやホンダや
トヨタもあるようになったのですから、
いいじゃありませんか。
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