第1606回
日本は駄目でも日本人は駄目になりません
工業生産の基地としての有利な条件が
日本から失われても、
もし中国がそれに変わる条件を
提供することができなかったとしたら、
中国が日本にとって代わる新しいアジアの時代は
実現することにはならなかったかも知れません。
コストインフレに悩まされはじめた日本の工場群が
タイやマレーシアに移動する気ざしはありましたが、
今日ほど大規模で加速化した大移動は
起らなかったと思います。
ちょうど中国共産党に一大転換期が来て、
「不平等は悪平等よりましだ」
「国全体が豊かになるのなら、
一部の人が先に金持ちになってもかまわないじゃないか」
という空気が生まれていなかったら、
アジアの時代は恐らくもっと何十年も先に
くりのべられていたことでしょう。
私が中国共産党の方向転換をいち早く感じ取って
工業基地の大移動を予想し、
且つ自分もその動きに乗って
活動する舞台を中国大陸に移してから15年たちました。
でもまさかこれほど徹底した形で、
国境をこえた生産基地の大移動が起るとは
恐らく誰も想像していなかったでしょう。
ほんの少し前まで国境の壁は高くて嶮しかったし、
資本の移動と外国企業の受け入れを
共産国や発展途上国がこれほど容易に受け入れるとは
誰も考えていなかったからです。
実際にそれが実現して見ると、
物づくりはコストの高い地域から
安い地域に移ってしまい、
もうどんなことがあっても元ヘは戻りません。
高度の技術だけが残ると言われていますが、
これも生産コストの安い地域に
工場を移しますから、
経済の法則を無視することはできません。
資本はお金の儲かる方向へ動き、
雇用も賃金の少くてすむ方向に動きます。
そのどちらも日本には不利であり
日本は素通りですから、
日本はドンドン日の沈む方向に残されてしまいます。
但し、それはあくまでも日本の地勢学的位置のことで、
日本人のことではありません。
日出ずる国の人はちゃんと
2本の足を持っているのですから
陽の昇る方向に歩いて動くことができるのです。
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