第1542回
TEAという言葉は厦門が発生の地

福州市は福建省の省都ですから、
本来なら広州市や杭州市と
肩を並べる経済発展の代表都市になりそうなものですが、
福建省では厦門市にお株を奪われています。
10何年前にはじめて訪れた時に比べても、
目のさめるような華々しい変化は見られませんでした。
その代わり緑の多い、
おっとりとした町並みですから、
捨てがたい趣きがあります。
なかでも私が好きなのは林則徐記念館で、
アヘン戦争を果敢に戦って敗戦の責を問われて
新疆まで左遷された硬骨の士は今日、
国民的な英雄になっています。
この記念館は大きからず、小さからず、
また華麗でもなければ、貧乏臭くもなく、
私の資力の範囲内でも建てられるスケールですから、
私が将来、雲南でコーヒー園を物にすることができたら、
新しく建てる記念館の参考にしたい建物の一つです。
但し、雲南に建てる場合は、
赤を使わずに黒と白をうまく組み合わせた
ローカル色の濃い建物になるでしょうが、
ここは筋を曲げなかった大先輩にふさわしい建物として
福州に行く度に必らず訪れる名所の一つです。

それに比べると、
経済特区の一つとして
高度成長の先端を走る厦門は、
来たことのない日本人にとっては
予想をこえる賑やかさで美しい港町です。
毎年、中国一清潔な町として
表彰されているくらいですから、
ゴミ一つおちておらず、物価が安いので
生活のしやすい町ということになっています。
台湾の人たちは
この近辺から移民した人が多いので、
台湾とシンガポールとは言葉も通ずるし、
台湾資本の進出も随所に見られます。

何よりもティという言葉は
ここが発生の地ですから、
茶所としての歴史が長いし、
町を歩いても茶の葉を売る店が
たくさん軒を並べています。
武夷山という世界一の茶の産地は
もっと奥のところにありますが、
日本人に親しまれるようになった烏龍茶も鉄観音も
みなこの土地の産物です。
私たちはすぐ隣りにあるコロンスという小島に行った時に
大紅袍というお茶を買いましたが、
宮廷にお茶を献上しところ、
皇帝が喜んで身につけていたコートを脱いで
褒美としてくれたといういわれのあるお茶でした。


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