第1522回
産業界の最悪のところは通りすぎました

いま日本の産業界は少し戻り足になっています。
株式市場が少し恢復しているのは
上場している会社が全体として
前年度に比べて利益をあげるようになったからです。
どうして計上金がふえたかというと、
中国経済の急速な成長によって、
鉄、非鉄金属、石油化学製品などの素材が不足気味になり、
その影響で斜陽化していた日本の素材産業が、
息を吹きかえしたのと、
もう一つはリストラによって
人件費のカットがすすみ、
経費の削減が利益を押し上げるようになったからです。

どちらも企業にとって
悪い話ではありませんが、
素材産業の好景気は
はたしていつまで続くかが問題だし、
リストラによる経費削減は
人員の整理と賃金の抑制によって
もたされたものですから、
年功序列給と終身雇傭制を
大きく修正することになってしまいました。
私は40何年も前から
日本の株式市場を観察する立場におかれ、
年功序列給と終身雇傭制は
従業員の愛社精神を昂揚し、
人手不足の時代には
雇傭の安定に役に立つけれども、
そのうちに企業の生産性と矛盾するようになるし、
しまいには退職金も払えない時が来るが、
企業はどうする積りだろうかと
疑問を呈したことが何度もありました。

この解決策は会社にクビにされてからでは間に合わない。
退職金が払えなくなった会社にクビにされるより、
その前に自分で自分のクビを切った方がいい、
まだ心身共にしっかりしているうちに
一生クビにされないですむ仕事を見つけるためには
40才で会社を辞めた方がいいと考えて
40才定年説を提唱しました。

私の予言したことは
40年たってやっと現実のものになりましたが、
会社にまだ退職金を払うだけの余力がある間に
終身雇傭制そのものがガタガタになったので、
早期退職によって
割増退職金をもらえる幸運に恵まれた人も
少くはありません。
一頃、一流会社はどこも大赤字で
産業界全体がおかしくなるのではないかと
心配されましたが、
そうした最悪の状態は
何とか通り越したということは言えます。


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