第1517回
買物をするのにも要領と習慣があります

物を買う時、
日本人には値切るという習慣がありません。
デパートでも、近所の商店でも
そこに表示されている値段で買います。
その方が手間がかからないで
買物ができるというメリットがあります。

それに比べると、
中国人は必らず値切ります。
日本のデパートは負けないとわかっていても
一応は値切って見ます。
私も値切って見たことがあります。
驚いたことに負けてくれたことがあります。
値ガサの商品だったので
外商部に連れて行かれて、
そこで1割引をしてくれたのです。
それに味を占めて、
はじめてロールス・ロイスの車を買った時、
デパートの外商部に行って
「おたくの会社で交渉してみてくれませんか」ときいたら、
「承知しました」と言って
10%値引きしてくれました。
35年も前のことですが、
1台1250万円の1割引でした。
マンションを1室買うより高かったことを覚えています。

そんな図々しい買物の仕方をしたのは
私が香港で暮らした経験があったからです。
物の値段を決めるのに、
売手だけが一方的に決めるのは
リクツに合わないと中国人は考えています。
鋏で紙を切るにしても
一方の刃だけで切れるわけではありません。
両刃があってはじめて切れるのです。
それと同じように売り手と買い手の呼吸があって
値段は決まるものだと中国人は考えているのです。

ですから、中国人の社会で
買物をするのには時間がかかります。
1軒だけ見てそこで値切ったのでは
ボラれてしまう心配があります。
大抵、同じ物を売る店がズラリと並んでいますから
こちらから向うまで一通り見てまわって、
商品と値段を確めて見た上で、
一番安い店で更に値切って買物をすることになります。
私たちのような旅行者が
旅先でそんな悠長なことを
いちいちやっている時間などありません。
デパートに行って見て、気に入った物があれば
その場ですぐに勘定の払える日本の方が
いいなあと思うこともしばしばあります。
でも中国でそんなことをやったら
バカを見るにきまっています。


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