第1432回
量販店も息をつく間がなくなりました

大量生産、大量販売を目指す工業社会では、
コストダウンとマーケットの開発が
最大の目標になります。
商売には必らずライバルがあり、
ライバルとの競争に打ち勝って行くためには、
他社より良い物を他社より安く
提供できるようにならなければなりません。
そうしたすぐれた商品を武器として、
新しいマーケットをひらき、
利益を拡大して行くのが
資本主義社会の至上命令なのです。

かつての日本は、
戦争に負けてどん底におちこみ、
メシを食うためには
何でもやらなければならなかったので、
低廉な賃金でも一生懸命働きました。
1ドル360円と円相場も安かったので、
このことも外国から注文を受ける
有利な条件として働きました。

おかげで日本は戦後40年間、
「世界の工場」として
いまの中国と似たような立場におかれ、
大量生産、大量販売を目指しているうちに
賃金も上がり、財産もふえ、
アメリカと並ぶほどの金持ちの国になりました。
いまでも日本人は
いままでと同じことを続けていますが、
気がつかないうちに
環境がすっかり変わってしまいました。

先ず第一に物ができすぎて、
メイド・イン・ジャパンの最大の顧客である日本人が
日本製品を買わなくなってしまったことです。
供給が需要をオーバーしてしまったのでは、
どんな天才的なセールスマンでもこれ以上、
マーケットを拡げて行くことはできません。

第二に賃金が高くなりすぎて、
如何に合理化をすすめても、
もっと賃金の安いところで生産される商品と
太刀打ちできなくなってしまったことです。

つまり大量生産と大量販売を目標とした
生産基地としての条件を失ってしまったのです。
人がまだたくさん住んでいますから、
大量生産の基地としては不適当になりましたが、
大量販売の対象としては
まだまだ見込みはあります。
でも需給のバランスがかなり崩れてしまいましたから、
量販店どうしで死活の競争をすることになってしまいます。


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