第1397回
パンとケーキで北京を席捲する皮算用

中国においしいパン屋やケーキ屋がないことは
いまにはじまったことではありません。
それでも上海の方が国際化がすすんでいますから
いくらかましですが、
北京と来たら
世界中の大公使館が集まっているというのに、
うちのすぐお隣りのルフトハンザ・センターの中にある
パン屋やケーキ屋でさえ
外国人の舌を満足させてくれることができないのです。

同じようなことが30年前の台北でもありました。
私が台北にビルを建てた時、
「裕次郎の店、フジ・コーヒー」
というお店を誘致しました。
また第二ビルを建てた時、
プチというパンとケーキ屋をひらいてくれた人に、
日本の職人の世話をしてあげたこともあります。
その連中がいま上海伊勢丹に
パンとケーキの店を出していますが、
北京はどういうわけか、
欧化がまだあまり進んでいません。
またそれだから北京からスタートするのも
一つの方法だと考えられます。

ケーキとパンは同じ店が経営するとしても
工場は別々に切り離さないとうまく行きません。
幸にも私の親しくしている人が
パンとケーキを東京でつくっていて、
東京の有名コーヒー・チェーンにも
製品を納入しています。
先ず工場を見せてもらって、
製品も試食させてもらって、
その上で北京に進出しないかと打診しました。
ご本人は大事をとって、
奥さんと息子さんを
先ず私について北京に行かせましたが、
奥さんと息子さんも
「いいタイミングだし、
お父さんにとってラスト・チャンスかも知れないよ」
と双手をあげて賛成してくれたので、
あとはいつ開業するかというところまで
こぎつけることができました。

パンの職人もケーキの職人も
ベテランを派遣しますから、
色々と折り合いもつけなければなりませんが、
人手不足の日本の工場に
研修生を送り込むルートができたようなものですから、
出資をした日本側にとっても
思いがけないメリットがありそうです。
噂をきいて外交官の駐在員の人たちが
自動車を乗りつけてくれれば
それだけで商売は成り立つのではないかと
とらぬ狸の皮算用をしているところです。


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