第1039回
産業地図が新しく塗り変わります

少し前までは国境の壁が高かったので、
外国から攻め込まれる前に、
守りを堅くして外敵の侵入を防ぐことができました。
貿易やお金や為替レートについても、
自分の国に不利なことが起こると、
すぐに高率の関税をかけたり、輸入禁止をしたりして、
それに対応するのが常識でした。
それでも世界恐慌の波を防ぎきれなかったし、
一国だけで金本位制を維持することもできませんでした。

アメリカにはモンロー主義と言って、
外国のことにかかわりあうより、
自分たちの利益を守るために、
自国のことだけに専念しようという考え方があります。
もしそうしようと思ったら、
アメリカのような資源も豊かで、
所得水準も高い国は、
それができないということはありません。
でもこれだけ交通や通信が発達して、
ヒト、カネ、モノの行き来が容易になったら、
アメリカといえどもモンロー主義の昔まで
逆戻りすることはできません。

ベルリンに再びベルリンの壁を
築くことができないように、
それぞれの国が孤立主義に戻ることは
先ず考えられません。
石川県や鹿児島県が
地方自治を主張することはできますが、
加賀藩や島津藩の昔に
帰ることができないようなものです。
アメリカにしても、
兄貴分として大きな顔をしているうちに、
次々とよけいな難題を
背負い込んでいるのを見てもわかります。

グローバル化が既成路線になってしまった以上、
かつて自国内のどこに工場を設けたらよいか、
どこを観光スポットにしたらよいかと考えたように、
地球的規模でその選択をすることが
避けられなくなってしまいました。
50年前に、日本人がアメリカに対して
生産基地になったように、
地球的規模で考えると、
中国がアメリカや日本やその他の先進国に対して
生産基地になることは避けられないのです。
従ってそうなった場合、
世界地図はどういう具合に変わるのか、
またモノやカネの動きがどうなるのかを
改めて考えるよりほかありません。
産業地図が新しく塗りかえられる
ところまで来てしまったのです。


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2003年1月13日(月)

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